更新 住宅の知識
昨今では、省エネ住宅に注目が集まっています。中にはGX志向型住宅のことを耳にして「それなに?」「160万円も補助金が出るの!?」と興味を持たれた方がおられるのではないでしょうか?
GX志向型住宅のことを調べ始めたものの、「断熱等級」「一次エネルギー消費量」「BEI」などの専門用語が出てきて混乱されているかもしれませんね。この機会に理解を深め、前に進みましょう。
本稿では、GX志向型住宅の定義や特徴をわかりやすく解説します。補助金を受けられる「子育てグリーン住宅支援事業」についても解説しますので、ぜひ最後までチェックしてください。
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さっそく、GX志向型住宅の定義や特徴、基準からご説明します。
省エネ住宅の代名詞とも言える「ZEH (ゼッチ、Net Zero Energy Houseの略)」との違いもご紹介しましょう。
従来、省エネ住宅と言えば「高気密・高断熱住宅」と称されてきましたが、その評価基準は必ずしも明確ではありませんでした。
2010年頃に「ZEH」という概念が登場したことで、住宅の省エネ性能の指標が明確に定義されるとともに、最高水準の省エネ住宅として業界内外から高い注目を集めるようになりました。
GX志向型住宅は、そのZEHを大きく上回る省エネ性能を持つ住宅。つまり、ZEHの登場から10年の歳月を経てようやく登場した次世代型省エネ住宅 ⸺ という位置づけです。
なお、GX志向型住宅の「GX」は「グリーントランスフォーメーション (Green Transformation)」の略です。
GXとは、簡単に言うと「地球温暖化に対処するため、できるだけ化石燃料を使わず (=温室効果ガスを排出せず)、太陽光発電等の再生可能エネルギーを活用していく取り組み」のことです。
また、温室効果ガスの排出削減のために経済成長にブレーキをかけるのではなく、両立を目指すところもGXの特徴と言えます。
参考:国土交通省「GX(グリーントランスフォーメーション)について」
GX志向型住宅として補助金を受ける場合は、以下の基準を満たす必要があります。
▸断熱等性能等級6以上
▸再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量を35%以上削減
▸再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量を100%以上削減(寒冷地75%以上)
▸高度エネルギーマネジメントの導入
それぞれ、詳しく解説しましょう。
GX志向型住宅に認定されるためには、断熱等性能等級6以上に適合する必要があります。
断熱等性能等級(以下、断熱等級)は、住宅の断熱性能を示す指標です。1から7まであり、数値が大きいほど断熱性能が高いことを意味します。
なお、2025年4月から、新築住宅には「断熱等級4以上の適合」が義務付けられています。
断熱等級5・6・7は、2022年度に新設されました。それぞれの省エネ性能は、等級4と比べると以下の違いがあります。
▸等級5:約10%の冷暖房費削減が期待できる
▸等級6:約50%の冷暖房費削減が期待できる
▸等級7:約70%の冷暖房費削減が期待できる
断熱等級5は、ZEH相当の省エネ性能です。2030年には、断熱等級5が新築に義務付けられる予定です。
GX志向型住宅に求められている「断熱等級6」は、非常に高度な省エネ性能です。建築時に断熱性の高い建材が必要になるため、建築コストが高額になります。
一方、光熱費や医療費などのランニングコストは低くなります。30年暮らすと、他の等級よりお得になるという試算もあります。
GX志向型住宅は、基準となる従来の住宅より一次エネルギー消費量(再生可能エネルギーを除く)を35%以上削減する必要があります。
一次エネルギー消費量とは、住宅で使われている設備機器(空調、換気、照明、給湯器など)の消費エネルギーを熱量(ジュール)に換算した値のことです。
よって、GX志向型住宅は、エネルギー消費を減らすための断熱強化や高効率設備(省エネエアコンや省エネ給湯器、LED照明など)の導入が必要です。
この要件は、建築物の省エネ性能を示す指標「BEI (Building Energy Index)」で言い換えると「0.65以下」に相当します。
BEIは、住宅の省エネに関する話題でときどき登場します。「BEI0.65以下を達成」と「再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量35%以上削減」が同じ意味だと覚えておくとよいでしょう。
GX志向型住宅は、再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量を100%以上削減、つまり《お住まいのエネルギー収支がプラスとなるレベル》を目指す必要があります。
言い換えると「太陽光発電などでつくり出したエネルギー量が、お住まいで消費したエネルギー量を超過する水準」ということです。
なお、この要件は太陽光発電に不利な低日射地域や、そもそも太陽光発電パネルを載せづらい都市部狭小地などに対して緩和措置が設けられています。
GX志向型住宅は、HEMS(ヘムス、Home Energy Management Systemの略)に代表されるエネルギー管理システムを備える必要があります。
HEMSは、簡単に言うと「家庭のエネルギーを上手に管理するシステム」のことです。たとえば、こんなことができます。
▸家電の電気の使い方を見える化
▸エアコンや照明をスマホやタブレットで遠隔操作
▸ソーラーパネルや蓄電池と連携して、電気代を節約
▸無駄な電力を減らして、CO2排出を抑える
HEMSのコントローラーは、一般社団法人エコーネットコンソーシアムのホームページに掲載されている製品(ECHONET Lite AIF仕様)を利用する必要があります。
認証を受けていない製品は補助対象になりません。
参考:子育てグリーン住宅支援事業「高度エネルギーマネジメントの導入」
長期優良住宅やZEHとGX志向型住宅は、どう違うのでしょうか?
長期優良住宅は、耐久性や維持管理のしやすさなど、住宅の長寿命化に重点を置いた認定制度です。そのため、目的や評価項目が異なる「GX志向型住宅」とは併存する概念です。
一方、ZEHは省エネと創エネ能力にフォーカスした概念で、GX志向型住宅はその上位にあたります。これまで省エネ住宅の代表だったZEHより、さらに高度な省エネ住宅の枠が新設された形です。
ZEHや長期優良住宅にも高い省エネ性能が求められますが、その基準値はGX志向型住宅より緩やかです。
たとえば、省エネ性能の指標で比較してみると、以下のような差があります。
▸ZEH住宅・長期優良住宅:断熱等級5以上、消費エネルギー20%削減(BEI値0.8以下)
▸GX志向型住宅:断熱等級6以上、消費エネルギー35%削減(BEI値0.65以下)
あくまで省エネ性能だけで見ると、GX志向型住宅がもっとも優れています。
補助金の対象となる世帯にも違いがあります。
▸ZEH住宅・長期優良住宅:18歳未満の子どもがいる世帯、または夫婦のどちらかが39歳以下の世帯
▸GX志向型住宅:すべての世帯が対象で、該当する住宅を建築すればどなたでも支援を受けられる
また、GX志向型住宅の補助金額のほうが、より優遇されています。
つづいて、GX志向型住宅の特徴をメリット・デメリットの観点からご説明します。
ただし、ここであげるメリットやデメリットは、ZEH等の省エネ住宅にも言えることです。「GX志向型住宅のほうが、よりその傾向が強い」とお考えください。
GX志向型住宅は、高い性能ゆえに建築コストも上昇しますが、それを補って余りある多くのメリットがあります。
主な利点は、以下のとおりです。
▸光熱費を大幅に削減できる
▸快適で健康的な暮らしができる
▸住宅の資産価値の向上が期待できる
GX志向型住宅は、従来の住宅より家庭内で消費するエネルギー量が格段に少なく、光熱費の削減につながります。場合によっては、余剰電力を売電して収入を得ることも可能です。
また、外気温に左右されにくく、室内の温度が年中安定します。冬場のヒーター依存や夏場の過度な冷房も減らせるため、健康に対して好影響があります。医療費の低減も期待できるでしょう。
さらに、政府のエコ住宅推進やカーボンニュートラル政策の流れもあり、高性能な省エネ住宅ほど資産として有利になる傾向があります。将来の売却時にも、高い需要が見込めます。
一方、GX志向型住宅を導入・建築するにあたって注意すべきデメリットや課題も存在します。
留意すべきポイントをあげてみましょう。
▸初期コストが高い
▸太陽光発電設備が必須
▸施工事業者が制限される
GX志向型住宅は、最高水準の断熱材や省エネ関連設備機器を備える必要があるため、従来の住宅に比べて建築コストが高額になります。補助金を活用することで、初期負担を軽減したいところです。
さらに、太陽光発電の導入が事実上必須となります (一部地域を除く)。そのため、屋根面積の確保やパネル設置に耐える屋根構造、さらに太陽光発電や蓄電池のメンテナンス費用が必要になります。
また、補助金を受けるためには、グリーン住宅支援事業者として登録された建築会社と契約する必要があります。登録事業者でない建築会社で建てた場合は、補助金の申請ができません。
最後に、GX志向型住宅の建築に利用できる補助金制度(子育てグリーン住宅支援事業)について解説します。
子育てグリーン住宅支援事業は、GX志向型住宅の建築にあたって活用できる代表的な補助金制度です。国土交通省と環境省が連携して実施しています。
子育てグリーン住宅支援事業は、令和5~6年度に実施された「子育てエコホーム支援事業」を改編・継続したものです。
エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯や若者夫婦世帯による「高性能住宅の取得・省エネリフォーム」を支援する目的で創設されました。
具体的には、一定の省エネ性能を備えた新築住宅を取得する際や、既存住宅で省エネ改修等をおこなう際に、対象世帯が申請することで国から補助金を受け取れます。
子育てグリーン住宅支援事業の補助金額は、新築・リフォームの違い、あるいは住宅の性能区分や取得者の属性によって異なります。
新築のGX志向型住宅に対する補助額は「160万円/戸」です。脱炭素社会実現に向けた最重点カテゴリーとして、長期優良住宅やZEHより高額な補助額が設定されています。
参考まで、1戸あたりの補助額の違いを記載しておきます。
▸GX志向型住宅:160万円/戸
▸長期優良住宅:80万円/戸
▸ZEH水準住宅:40万円/戸
先述のとおり、長期優良住宅やZEHの補助金は「子育て世帯または若者夫婦世帯」が対象です。一方、GX志向型住宅は世帯の属性を問わず申請できます。
なお、災害リスクが極めて高い立地に建つ住宅は補助対象から除外される場合があります。
参考:子育てグリーン住宅支援事業「新築住宅の立地等の除外要件」
新築住宅の場合の補助金は、住宅を建築する事業者(ハウスメーカーや工務店など)が申請し、交付後に建築主(施主)に還元する形で運用されます。
建築主は、自ら煩雑な申請手続きをおこなう必要はありません。事業者側が交付申請を代行して、補助金分を建築費用から値引きする仕組みになっています。
ですから、申請において建築主にとって重要なのは以下の2つです。
▸登録事業者となっている事業者と契約する
▸要件を満たす住宅を建築する
その他は、事業者から必要書類の提供を求められた際に協力する程度です。申請が受理され補助金交付が決定すると、交付額相当が建築費用から差し引かれます。
補助金を申請する際は、以下の2つの期限に注意する必要があります。
▸交付申請期限:遅くとも2025年12月31日まで
▸完了報告期限 (戸建て住宅):2026年7月31日まで
子育てグリーン住宅支援事業では、建築事業者と建築主は、新築住宅の引渡しと建築主の入居について期限までに事務局へ報告する必要があります。
完了報告の提出がない場合や不備が解消できなかった場合、事務局より事業者に交付済補助金の返還請求がおこなわれる場合があります。
なお、交付申請は、申請期限が3期に区分され、期間ごとの予算上限が設定されています。
期限内であっても予算に達した場合は終了となりますので、利用を検討されている場合は、なるべく早めにご計画を進めていただくほうが安心です。
GX志向型住宅は、ZEHを大きく上回る省エネ性能を持つ住宅です。建築コストが高くなる反面、光熱費や医療費などの低減が期待できるため、長期的には経済的かつ快適な暮らしができます。
また、補助金制度(子育てグリーン住宅支援事業)でも、最重点カテゴリーとして長期優良住宅やZEHより高額な補助額が設定されています。うまく活用することで建築コストを抑えられるでしょう。
2030年には、新築に対してZEH相当の省エネ性の適合が義務付けられる予定です。新築をご検討中で省エネ性にこだわりたい方は、思い切ってGX志向型住宅を目指してみてはいかがでしょうか。
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