更新 間取りのこと
従来、2階建て以上の住宅にはベランダを付けるのが常識でした。最近はその「常識」が見直され、ベランダを設けない方が少しずつ増えています。
ベランダは洗濯物を干すのに便利ですが、短所もあり、その短所が長所を上回ると感じる方が「ベランダ無し」を選択しているのです。
本稿では、ベランダを無しにするメリット・デメリットをご紹介します。これまでの「常識」を再検討して、あなたのライフスタイルに合った家づくりをしてみませんか。
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ベランダは「絶対に必要なもの」ではありません。そもそも、従来から平屋にはベランダが無く、条件が整えば2階建て以上の建物でも「ベランダ無し」にできます。
では「ベランダを無くしてしまっても、問題ない」と言えるのでしょうか。
じつは最近、2階建て以上の新築で「ベランダ無し」にされる方が増えています。建築コストや維持管理の負担を軽くするために「ベランダ無し」が有効な選択肢になっているのです。
実際、事務的にベランダを設置した人の中には、さまざまな理由からほぼ使っていない方もおられるようです。そんな方々は「ベランダを無くせばよかった」と感じているでしょう。
一方、ベランダの利用目的が明確で、それが他の方法で代替できないなら、従来どおりベランダを設置すべきでしょう。まずは、自分にとってベランダが絶対にいるのか、見きわめが必要です。
これまで「ベランダ」と紹介してきましたが、じつは設計では「バルコニー」と表現するのが一般的です。建築基準法施行令に「ベランダ」の記載はなく「バルコニー」となっています。
ただし、建築基準法および同法施行令では、ベランダとバルコニーの定義や区分方法を明文化していません。では、一般的にどう使い分けているのでしょうか。
用語辞典によると、ベランダとバルコニーは以下の特徴分けがされています (参考:国立国会図書館レファレンス協同データベース)。
・ベランダ:家屋に沿って張り出した屋根がある縁
・バルコニー:2階以上の高所に張り出した屋根の無い露台
ベランダとバルコニーの大きな違いは「屋根」です。「屋根がある」のがベランダで、「屋根が無い」のがバルコニーとされています。
ちなみに、世間的には「ベランダ」と呼ぶ方のほうが多いようです。「ベランダ無し」と「バルコニー無し」では、前者のほうが2倍ほどインターネットの検索数が多くなっています。
本稿では、ベランダとバルコニーを区別せず「ベランダ」で統一して解説を進めたいと思います。ご了承ください。
つづいて、新築でベランダを無くした場合のメリットとデメリットを解説します。まずはデメリットから、3つご紹介しましょう。
・洗濯物や布団などの外部干し場がなくなる
・外観デザインがのっぺりしやすい
・日射や雨の遮へいができない
順番に、詳しくご説明します。
ベランダの用途と言えば、真っ先に思いつくのが「干す」でしょう。「布団や洗濯物を太陽に当てて干したい」と感じている方が少なくないと思いますので、ベランダを無くすと困りそうです。
実際、高温かつ風通しがよい場所で干すと殺菌・防カビ効果があるそうです。夏の土用におこなわれる「虫干し」は、科学的に見ても意味があるのですね。
一方、紫外線による除菌効果は、あまり期待できないそうです。ですから「除菌のためにベランダが必要」と思われているのであれば、ランドリールームをご検討いただいてもよいでしょう。
一戸建て住宅の外観は、凹凸をうまく活用することで豊に見えます。ですから、ベランダは「物干し」としての実用性だけでなく、意匠性からも「いる/いらない」を検討したいところです。
ベランダを無くすと、箱型の家はのっぺりした印象になりやすいでしょう。外観に高級感や重厚感を求めるのであれば、ベランダの無い家は形状や屋根のかけ方等で工夫する必要があります。
住宅の設計手法のひとつに「パッシブデザイン」という考え方があります。この手法では、夏は涼しく冬は暖かく過ごすために、庇(ひさし)やベランダの張り出しを使い日射をコントロールします。
・夏 ⇒ 高い位置にある太陽の日射を遮る
・冬 ⇒ 低い位置にある太陽の日射を取得する
1階の窓の上にベランダがあると、夏は日射を遮ってくれますので、冷房の効率が向上します。ベランダを無くす場合は、代わりに庇や外付けブラインド等を設置しないと、日射を遮れません。
ベランダは雨よけにもなりますので、1階の窓や玄関ポーチの上にベランダを配置している家が少なくありません。ベランダを無くすと、このような活用もできなくなります。
つづいて、ベランダを無しにした場合のメリットをご紹介します。
・掃除の手間が減る
・コストが下がる
・防犯上の不安が減る
それでは、順番に解説していきましょう。
ベランダには砂やホコリ、鳥のフン、虫の死骸などがつきますので、定期的に掃除が必要です。排水溝のゴミの除去や、雪国であれば除雪作業が必要になることもあるでしょう。
ベランダの掃き掃除や洗浄は、意外と大変です。ベランダに水栓が無い場合は、室内からバケツで水を運ばないといけません。
ベランダがなければ、掃除の手間から開放されます。長く暮らせば暮らすほど、この効果は大きく実感できるでしょう。
ベランダをつくるには、外壁工事や防水工事、金物等のイニシャルコストがかかります。ベランダを無くせば、この費用はかかりません (代わりに部屋をつくる場合は、その費用と相殺)。
また、ベランダが無ければ定期メンテナンスとそのコストも必要なくなります。ベランダの防水は、雨漏りを防ぐために一定期間ごとに塗り替えや修繕が必要になるのです。
雨漏りのほとんどは「屋根材、板金、サッシ(窓)、ベランダ、外壁材」で発生します。このうち無くせるのは「ベランダ」だけで、雨漏りの不安が一か所減る効果は大きいでしょう。
多くのベランダは、プライバシーを守るために中が見えにくくなっています。ですから、空き巣にとっては隠れやすく、誰にも見られずに窓の解錠作業ができる都合のよい場所になっています。
一般的に、この対策として窓を防犯ガラスにしたり人感センサーライトを設置したりします。電柱・塀・高木など、侵入の足場になるものとベランダの位置関係にも留意しなくてはなりません。
もしも、ベランダが無ければ、もう少し防犯対策のレベルを下げることができるでしょう。その結果、安心が得られるだけでなくコストダウンもできます。
最後に「ベランダ無し」でもやっていけそうな方の特徴をご紹介します。
・ベランダにものを干さない
・じゅうぶんな広さの庭がある
・住宅密集地で採光や通風が期待できない
順番に、ご説明していきましょう。
花粉や黄砂、PM2.5を気にして、外干しをされない方が少なくありません。そんな方には、ベランダよりランドリールームがおすすめです。
ランドリールームなら、大気汚染から衣類を守る以外にも、以下のメリットが得られます。
・洗濯動線が短い
・外履きに履き替える必要が無い
・干すときに暑くない(寒くない)
・掃除がラク
ランドリールームについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。ランドリールームの特徴やメリット・デメリットをご紹介しています。
》ランドリールームとは?便利?なぜ、ランドリールームをつくるのか
じゅうぶんな広さの庭が取れる敷地も、ベランダを無くせる可能性が高いです。洗濯物干し場は、ベランダの代わりに庭が使えます。
また、ベランダを以下のような目的で利用される方もおられますが、これらもすべて庭で用が足ります。
・ベランダ菜園
・プールなどの子どもの遊び場
・セカンドリビング
・ゴミの一時置き場
・エアコン室外機置き場
じゅうぶんな広さの庭が取れる方は、ベランダがなくてもあまり問題が無いでしょう。
狭小地や住宅密集地も、ベランダが本当にいるのか検討が必要です。ベランダをつくったとしても、以下の状況だと使わなくなる可能性があります。
・狭い
・暗い
・風が通らない
・隣家からの視線が気になる
上述のような状況になるなら、ベランダはやめて、室内干しできる工夫をしたほうがいいかもしれません。もしくは、屋上も選択肢のひとつとしてご検討いただくとよいでしょう。
なお、屋上はさまざまな用途に使えて便利ですが、雨漏りの要因になります。施工精度の高い建築会社を見つけ、かつ定期的なメンテナンスが必要になる点はご留意ください。
新築で「ベランダ無し」を検討する際、もっとも考慮したいのが「干し場」としての役割です。室内に干し場が確保できるなら「ベランダ無し」でもほとんど問題なく生活できるでしょう。
とは言え、家づくりの正解はご家庭や敷地の事情に大きく左右されます。経験豊富な建築会社と一緒に納得がいくまで検討したうえで、ベランダを付けるか無くすかご判断ください。
東広島ハウジングフェア住宅展示場にある創建ホームのモデルハウスでは、ランドリールームをご見学いただけます。ベランダ無しの注文住宅をご検討中の方は、ぜひご来場ください。