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都市部の狭小地で家を建てるとき、車をどう置くかは大きな悩みどころですよね。そんな問題を解決してくれるのが「ビルトインガレージ付き3階建て」です。
この3階建てなら、敷地を有効活用できるため、狭小地でも駐車場を確保しやすいです。一方、「建築費用が高いのでは?」「階段移動が大変そう」「耐震性は大丈夫?」という声もあります。
本稿では、ビルトインガレージ付き3階建てのメリット・デメリットについて解説します。間取りや設計の注意点もご紹介しますので、後悔しない家づくりの参考にしてください。
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都市部で人気の高いビルトインガレージ付き3階建てですが、メリットだけではありません。実際に建てるとなると「予算」「暮らしやすさ」などに影響する注意点もあります。
ここでは、知っておきたいデメリットから確認しておきましょう。
▸建築費用が割高になる傾向がある
▸生活動線が複雑になり、階段移動が多くなる場合がある
順番に解説していきます。
ビルトインガレージ付き3階建ては、一般的な2階建て住宅や、外部に独立したガレージを設ける住宅に比べて、建築コストが高くなる傾向があります。
コストアップしやすいポイントをご紹介しましょう。
3階建ては建物の重量が増すため、沈下を防ぐための地盤改良工事費が高くなるケースがあります。とくに軟弱地盤では、大がかりな補強工事が必要になり、工事費が上がりやすくなります。
3階建てを建築するための土地を探す際は、地盤の強度にも注意しましょう。
若いうちは、階段移動も気にならないものです。しかし、将来を考えてエレベーターを設置する、あるいは設置可能なスペースを確保しておくと安心です。
その分、初期費用や準備工事費がかかります。
防火地域や準防火地域では、3階建て住宅に厳しい防火基準が適用されます。不燃材や準不燃材を使う必要があり、自由に建材を選びにくいため、コストが上がりやすくなります。
さらに、ビルトインガレージ部分も防火上の内装制限を受けます。壁や天井に準不燃材料を用いる必要があり、コストダウンしづらいでしょう。
盗難やイタズラ対策として、シャッターやドアを設置する場合もコストアップ要因となります。
こうした理由で、ビルトインガレージ付き3階建て住宅の建築費用は高めになりがちです。しかし、2階建てや平屋より必要な敷地面積を抑えられるため、土地代を節約できる可能性があります。
また、ビルトインガレージを設ければ月極駐車場を借りる必要がなくなるため、トータルで見るとコストメリットを得られるケースもあります。
都市部で建築する際は「土地代+建築費+駐車場代」をセットでシミュレーションしておくと安心です。
ビルトインガレージを1階に設ける場合、リビングやダイニング、キッチンといった主要な生活空間は2階や3階に配置されるのが一般的です。
この間取りは、暮らしやすさの面で「生活動線が長くなる」「高齢期に負担が大きくなる」といった問題を生じやすくなります。
LDKが2階にある場合、外出や帰宅のたびに階段の上り下りが必要になります。
買い物から帰宅した際には、重い荷物を持って2階まで運ぶ負担が生じ、ゴミ出しの際には1階の玄関まで階段を下りなければなりません。
このような行動が積み重なり、意外と負担に感じる場合があります。
若いうちは階段移動も苦になりませんが、年齢を重ねるにつれて体力的な負担が大きくなります。
将来的に「階段の上り下りがしんどい」と感じてしまう可能性が高く、暮らしやすさに直結する問題となり得ます。
こうした課題を軽減するには、生活動線の効率化を意識した設計が欠かせません。たとえば、階段を適切な場所に配置して動線を短くするなど工夫が考えられます。
また、将来を見据えてホームエレベーターの導入を検討しておくのも有効です。初期費用はかかりますが、重い荷物の運搬や高齢期の生活を大幅に快適にしてくれます。
すぐに設置しなくても「将来的に追加できるスペース」を設計段階から確保しておけば安心です。いずれにしても、間取りの工夫次第で暮らしやすさは大きく変わると心得ておくとよいでしょう。
デメリットもあるビルトインガレージ付き3階建てですが、都市部の暮らしにフィットする大きなメリットもあります。
ここでは、主なメリットを見ていきましょう。
▸土地を有効活用できる(狭小地でも駐車スペースを確保)
▸車を雨や紫外線、盗難、イタズラから守りやすくなる
▸多様な目的に活用できる「多機能空間」になる
順番に解説します。
都市部の狭小地では、じゅうぶんな広さの土地を確保するのが難しく、駐車場を別に借りるケースも珍しくありません。
一方、ビルトインガレージ付き3階建てなら、限られた敷地の中で居住空間と駐車スペースを両立できます。建物の1階部分を駐車場に充てることで、土地をムダなく有効活用できるのです。
ところで、ビルトインガレージに適用される「容積率の緩和措置」をご存じでしょうか?
じつは、家を建てる際には「容積率」という規制があり、敷地に対して建てられる延床面積の上限が決まっています。
参考:建築基準法 第52条
このルールを知っている方なら「ガレージ部分も床面積に含まれるのでは?」と不安に思うかもしれません。しかし、ビルトインガレージには容積率の特例があります。
じつは、建物の延床面積の5分の1を上限に、車庫部分は容積率の計算から除外できます。
参考:建築基準法施行令 第2条
ビルトインガレージ付き3階建ては、容積率の緩和措置によりガレージを設けても居住スペースを大きく削らずに済むため、狭小地での建築で重宝されています。
たとえば、道路側をビルトインガレージにし、その奥や2・3階を生活空間にすれば、コンパクトな土地でも想像以上に広々とした住まいを実現できます。
リビングを2階に、バルコニーを3階に設置することで、3階建てならではの眺望を手に入れることも可能です。
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都市部で土地代を抑えつつ駐車スペースを確保したい方には、ビルトインガレージ付き3階建てが有力な選択肢となるでしょう。
ビルトインガレージは建物の一部であるため、外部の環境要因から車を守るだけでなく、防犯面でも大きな効果を発揮します。
車を大切にする人にとって、単なる駐車スペース以上の安心をもたらしてくれる存在です。
ビルトインガレージは屋根や壁に囲まれているため、直接雨風にさらされず、車体の汚れやサビを防ぎやすくなります。
さらにシャッターを閉めれば紫外線をほぼ遮断でき、塗装の色あせや樹脂パーツの劣化も抑えられます。結果として、車の美観を長く保つことにつながります。
シャッターや鍵付きのドアを設けることで、車上荒らしやイタズラへの物理的な防御力が高まります。
また、シャッターやドアがあれば、ガレージ内に車を収めると外から車種が見えなくなります。「どんな車があるのか分からない」こと自体が盗難の大きな抑止力になるでしょう。
住宅と一体化しているため、不審な動きに気づいたり、ホームセキュリティシステムと連携したりしやすい点も魅力のひとつです。
ビルトインガレージは、車を大切にしている方にとって、単なる駐車スペース以上の価値を提供してくれます。
ビルトインガレージは単なる車庫にとどまらず、趣味や暮らしの幅を広げる「多機能スペース」としても活用できます。工夫次第で、家族それぞれが便利に使える場所になるのです。
ビルトインガレージの床は一般的にコンクリートやモルタルで仕上げられることが多く、丈夫で汚れに強いため、趣味や日常の作業スペースとして使いやすいのが魅力です。
具体的な活用例としては、次のようなものがあります。
▸DIYの作業スペース:工具を広げて作業でき、後片付けもラク
▸自転車のメンテナンススペース:タイヤ交換やクリーニングも屋根の下で快適に
▸子どもの遊び場:猛暑日は日陰でプール、雨の日は外遊び気分で過ごせる
ビルトインガレージを少し広めに設計しておけば、暮らしに合わせた多様な使い方ができます。さらに、コンセントを設けておくと電動工具や充電器が使え、用途がぐんと広がります。
ビルトインガレージは、車を停めるだけでなく、家族のライフスタイルに寄り添う「便利なプラス空間」として設計すると楽しいですよ。
ビルトインガレージ付きの住宅では、快適に暮らすために「間取りの工夫」が欠かせません。ガレージと居住空間が一体になるからこそ、生活動線や防音、耐震性などに注意する必要があります。
ここでは、間取りや設計でとくに気を付けたいポイントをご紹介します。
ビルトインガレージの直上や真横に、寝室や書斎といった「静かな環境が必要な部屋」を配置することは、避けたほうが無難でしょう。
ガレージでは車の出入りにともなって、次のような音や振動がどうしても発生します。
▸エンジン音がこもる
▸シャッターの開閉時に音が鳴る
▸エンジン音やシャッターの開閉で振動が発生する
とくに深夜や早朝の車の利用は、就寝中の家族にとって大きなストレスとなり、睡眠の妨げになる可能性があります。
こうした騒音や振動は、防音性能の高いシャッターや防振対策などである程度軽減できます。しかし、完全に無音にするのは難しいのが実情です。
そのため、寝室や書斎など静けさを求める部屋はガレージから離して配置するほうが安心です。
ビルトインガレージ付き3階建て住宅を建てる際には、耐震性を意識した設計がとても重要です。耐震の向上を怠ると、建物全体の強度が不足し、地震時に揺れやすくなるリスクがあります。
ビルトインガレージを設けると、1階部分に大きな空間や開口部が生まれます。なぜなら、車の出入り口を確保するため、壁や柱を設置しづらくなるからです。
その結果、次のような問題が起きやすくなります。
▸耐力壁の量が少なくなる
▸壁の配置バランスが悪くなる
▸建物がねじれやすくなる
とくに間口が狭く奥に長い敷地では、道路側の壁や柱が不足しやすく、建物全体の安定性が低下する恐れがあります。
一方で、地震に強い建物の条件は以下のどおりです。
▸耐力壁の量がじゅうぶんにあり、配置バランスがよい
▸上下階で柱の位置が揃っている(柱の直下率が高い)
▸外観の形がシンプルで凹凸が少ない(正方形や長方形が理想)
つまり、ビルトインガレージを取り入れる場合でも、これらの条件に近づける設計を意識することで、より安全な家にできます。
現代の建築技術では、構造計算を徹底し、適切な工法を採用すれば高い耐震性を確保できます。たとえば、木造住宅でも「耐震等級3」といった最高レベルの性能を実現可能です。
ビルトインガレージを安心して取り入れるためには、設計段階で耐震性をどう確保するかを建築会社と相談することが欠かせません。設計力があり、信頼できる建築会社を選んでください。
ビルトインガレージ付き3階建ては、都市部の限られた土地を有効活用できる魅力的な住まいです。一方で、配慮が必要なデメリットもあります。
しかし、デメリットは設計の工夫や最新の建築技術である程度カバーできます。さらに、暮らしやすいように間取りを検討すれば、満足度の高い住まいが実現できるでしょう。
「狭小地でも車を所有し、快適で安心できる家に住みたい」⸺ そんな方にとって「ビルトインガレージ付き3階建て」は魅力的な選択肢となります。
創建ホームは、広島県で7,000棟を超える注文住宅の実績があり、木造建築に精通しています。3階建て住宅も数多く手がけていますので、お気軽にご相談ください。
創建ホーム「空とつながる 3階建てスカイバルコニーの家」はこちら 》
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