更新 設備のこと
近年、大容量で高機能、そしてオシャレな《フロントオープン型の食洗機》が注目されています。とくに海外製品はスタイリッシュなモデルが多く、とても人気ですよね。
一方、価格が高めで、使い勝手に注意が必要な側面もあり「設置すると後悔するのでは?」と慎重になる方も少なくありません。毎日のように使うものだからこそ、じっくり選びたいところです。
本稿では、フロントオープン型食洗機のメリット・デメリットや、ビルトイン食洗機選びのポイントを徹底解説します。納得の一台に出会うために、ぜひ最後までチェックしてください。
目次 |
---|
ビルトイン食洗機は、大別すると小型の《スライドオープン型》と大容量の《フロントオープン型》の2種類に分けられます。
本稿でご紹介するフロントオープン型は、扉を前方に90度開けて、上下2~3段のカゴを引き出して食器をセットするタイプです。国内メーカーだけでなく、海外製も非常に人気があります。
フロントオープン型は大容量で高性能、かつデザイン性にも優れたハイエンドの食洗機ですが、注意したいデメリットもあります。代表的なものをご紹介しましょう。
▸食器を出し入れする際、腰を曲げたりかがんだりする必要がある
▸食洗機の下に収納キャビネットを設置できない
▸スライドオープン型に比べて初期・維持コストが高い傾向がある
順番に詳しく解説します。
フロントオープンタイプは、下側にヒンジが付いた扉を90度に開けて、カゴを前面に引き出して使います。そのため、食器を出し入れする際に腰を曲げたり、かがんだりする必要があります。
また、扉を開け閉めする際や、洗剤を入れる際にも腰を曲げる姿勢になります。毎日のようにこの動作を繰り返すとなると、高齢者や腰痛持ちの方は負担に感じるかもしれません。
ただし、メーカーもこのデメリットを認識しており、「通いかご」というアイテムが登場しています。シンクで予洗いした食器を「通いかご」に置き、そのまま食洗機にセットできる優れものです。
参考:TOTO「ザ・クラッソ食器洗い乾燥機R (フロントオープン・通いかご・扉材)」
フロントオープン型の食洗機は、本体の高さが約80~85cm程度あり、キッチンの天板下スペースをフルに占有してしまいます。そのため、食洗機の下に収納キャビネットを設置できません。
具体的には、天板下スペースに2~3段構造のバスケットや洗浄ノズル、モーターなどが下部までびっしり詰まっています。ですから、本体の下に収納を設ける余地がありません。
キッチンのキャビネットにたくさんの食器や調理器具をしまいたい方は、スライドオープン式のほうが向いているでしょう。
フロントオープン型の食洗機の初期費用と維持費用は、スライドオープン型の食洗機に比べて高い傾向があります。
一例として、Panasonicの食洗機で本体の価格を比較してみましょう。おおよそ1.5倍程度の差があります。
▸スライドオープン型 (NP-45RD9) ⇒ メーカー希望小売価格 (税込):212,300円
▸フロントオープン型 (NP-45EF1) ⇒ メーカー希望小売価格 (税込):363,000円
使用水量や消費電力量も比較してみましょう。
▸スライドオープン型 (NP-45RD9) ⇒ 標準使用水量:約7.5L、消費電力量:約0.45kWh
▸フロントオープン型 (NP-45EF1) ⇒ 標準使用水量:約14.1L、消費電力量:約0.7kWh
スライドオープン型は省エネ性能に優れており、使用水量や消費電力量の少なさが特徴です。そのため、1回の洗浄にかかる費用はフロントオープン型のほうが高くなります。
ただし、単純には比べられない点に留意してください。一度に大量の食器を洗浄できるフロントオープン型のほうが、使い方によっては経済的になることも考えられます。
一方で、フロントオープン型にはさまざまなメリットがあります。代表的なものをご紹介しましょう。
▸大容量の機種が多く、一度にたくさんの食器を洗える
▸食器を並べやすく、セットの自由度が高い
▸洗浄力が強力で、食器の隅々までムラなく洗える
▸スタイリッシュで高級感のあるデザインの機種が多い
順番に詳しく解説します。
フロントオープン型のビルトイン食洗機は、一般的に大容量の機種が多く、一度にたくさんの食器を洗えます。
Panasonicの食洗機を例に、洗える食器量の目安や庫内容量を比較してみましょう。
▸スライドオープン型 (NP-45RD9) ⇒ 食器点数:44点、庫内容量:約62リットル
▸フロントオープン型 (NP-45EF1) ⇒ 食器点数:58点、庫内容量:約122リットル
このような特徴を持つフロントオープン型は、大家族や、食事の際にたくさんの食器を使うご家庭におすすめです。
2~3人家族なら、1日分の食器をまとめて洗えますので経済的です。
フロントオープン型のカゴは、スライドオープン型のように周りが囲われていないため、縦からでも横からでも食器を入れやすい構造になっています。
あとから追加で入れるのも簡単です。入れる順番を間違えても、わざわざ上の食器を取って入れ直す必要がありません。配置や入れる順番に神経質にならずに済むでしょう。
また、食器や調理器具をセットする際の自由度も高いです。特殊な形の食器やパスタ鍋のような大型の調理器具も、丸ごと入れて洗えます。
一般的なフロントオープン型は、庫内の複数箇所に回転式洗浄ノズルを備えています。この複数のノズルを使い、上下から強力な高圧シャワーで洗浄するため、洗い残しが少ないのです。
また、2~3段のカゴによって食器の配置を分散できるので、どのカゴにも満遍なく強い水流が届きます。その結果、複雑な形状の食器やコップの底、急須の中までムラなく洗浄できます。
「食洗機って、結局予洗いが要るよね」と不満を感じていた方には、フロントオープン型がおすすめです。予洗いなしでピカピカになります。
フロントオープン型はミーレやボッシュ、ガゲナウなどの海外メーカー製品が主流で、シンプルかつ洗練されたデザインが魅力です。ビルトインすることでキッチンの雰囲気がグレードアップします。
一方、国内メーカーが生産するフロントオープン型も増えつつあります。海外メーカーの高いデザイン性を追いかけながら、機能性とリーズナブルな価格を実現しています。
「キッチンをもっとオシャレにしたい」という方には、フロントオープン型の食洗機がおすすめです。眺めるたびに感じる満足感が、毎日の家事をちょっと特別な時間に変えてくれます。
最後に「後悔・失敗しないビルトイン食洗機の選び方」を解説します。以下の点を考慮して比較検討しましょう。
▸家族構成や洗い物の量・頻度はどうか
▸使い勝手と体の負担をどう考えるか
▸予算とランニングコストをどうしたいか
順番に解説します。
一度に洗う量が多い大家族やまとめ洗い派のご家庭には、大容量のフロントオープン型がおすすめです。横幅の広いタイプを選ぶと、より多くの食器を一度に洗浄できます。
食事ごとに少量ずつ洗いたい、あるいは洗い物の量が少ないご家庭は、スライドオープンでも十分でしょう。使い方に合った容量を選ぶことで、余分な電気代や水道代を抑えられます。
なお、食洗機は長く使うものですので、将来的な家族構成の変化なども考慮に入れて検討してください。
食器のセットの自由度や、大きな調理器具などの洗いやすさを求める場合は、フロントオープン型のほうが対応しやすいです。
一方「かがむ動作が苦手」「腰への負担を減らしたい」という方には、立ったまま出し入れしやすいスライドオープン型がおすすめです。
食洗機の下に収納スペースを確保したい場合も、食洗機本体が浅いスライドオープンの浅型がよいでしょう。
初期費用や毎回の運転費用を抑えたい場合は、比較的安価で省エネ性能の高いスライドオープン型が有利です。
ただし、スライドオープン型で「朝・昼・晩」と複数回洗うよりも、フロントオープン型で1日1回にまとめて洗うほうが経済的になる可能性もあります。
迷ったら、メーカーのショールームや建築会社スタッフなどの専門家に相談しましょう。多くの経験に裏打ちされたアドバイスがもらえますよ。
フロントオープン型の食洗機は、その高い洗浄力とデザイン性で日々の家事をより快適に、そして豊かにしてくれる存在です。一方、使用感やコストなど、慎重に見極めたいポイントもあります。
大切なのは、ご自身やご家族のライフスタイルに合った一台を選ぶこと。メリットとデメリットをしっかり比較したうえで、納得できる選択をしましょう。
食洗機は毎日のように使うものだからこそ、使いやすさと満足感の両立がとても大切です。あなたにぴったりの一台を見つけてください。本稿が、理想の食洗機選びのヒントになれば幸いです。